森林農法(アグロフォレストリー)

森林農法で安定した暮らし

 

一般的なコーヒー栽培は、大規模な農場でコーヒーだけが栽培される「プランテーション農法」で行われることが多いのですが、たくさんのコーヒーを効率よく栽培することができる反面、天候不順などでコーヒーが不作になった時、生産者は自給用の作物や他の換金作物が無いために、生活が不安定になりがちです。

 

森林農法のコーヒー園では、コーヒー以外にいろんな種類の樹木と果樹、ナッツや農作物を混植しています。コーヒーが分散していて作業に手間がかかる一方、たくさんの種類の木があることで森から食料、薬、木材、飼料、燃料、樹脂など多くの恵みを得ることができます。さらに、オールスパイスなどの背の高い木は、直射日光が苦手なコーヒーの木に日陰をつくってくれます。果樹の落ち葉は、土に返ることで肥料となります。

  

天候不順などで、コーヒーの収穫が不安定な時も、森林農法のコーヒー園は他の作物を自家消費や販売用として提供してくれるのです。このような森林農法を充実させていくことで、生産者は安定した暮らしを営むことができます。

 

持続可能な森づくり

 

 多様な木や草花などの植物が生き、森をすみかにする動物や鳥類が活き活きと暮らしている状態を「生物多様性が豊か」と言います。
森林農法の森には数十種類から数百種類の鳥類が見られ、コーヒーだけの単一栽培農園には数種類の鳥類しか見られません。


生物多様性が豊かな場所には、害虫と共に天敵となる別の虫がいて、病原菌にも拮抗する別の菌が存在しています。結果として、害虫や病気の菌だけという偏った環境になりにくく、全体の調和がとれることで、コーヒー樹自体も健康になり、農薬や化学肥料を使用せずに有機栽培をすることができるのです。
 


中南米ではコーヒーが持ち込まれる前から先住民の伝統文化の一つとして森林農法が営まれていました。
世界の森が年々減少し、生物種の絶滅が加速したり気候変動が大きくなる中で「森を守り森を育てる農業」「自然と共生する農業」として世界から注目されています。